「世界地図を、各国のGDPの大きさで表現すると?〜2007年データと2050年予測かれ見えてくる世界〜」
皆さまご存知のように、これは世界地図です。

*地図はこのサイトの大きさに合わせたJPEGファイルになっているので、小さくて見にくいかもしれません。
その場合は下記リンクからPDFバージョンをダウンロードしてご覧下さい。
http://www.ut-iris.org/UserFiles/worldmap-gpdsize.pdf
**地図の画像ファイル名で、「GDP」が「GPD」になっておりますが、時間を見つけて修正いたします。
先日、電車の中でふと「世界各国の経済力を、地図で表すとどんな感じやろ?」と思って、それを試しに作ってみました。
国際通貨基金(IMF)のデータを元に、Adobe Illustratorを使って世界地図をいじってみました。
■内容としては・・・
・国のGDPを、面積で表現しました。つまり、よりGDPが高い国、つまりお金持ちな国を、大きくしました。
・GDPが1000億ドル(10兆円)に満たない国は、申し訳ないけど除外しました。
・更に、プライスウォーターハウスクーパーズという会計系コンサルティング会社が発表した「2050年の各国GDP予測」をもとに、2050年の世界も同じように表現してみました。
■注意点
・GDPに応じた面積は完全に目分量なので、特に、日本、インドネシア、チリ、イタリアのようにアヴァンギャルドな形をした国の誤差は大きいです。
・経緯度は、できるだけ揃えようとしましたが、実際の面積よりも大きくなってしまう国が西欧を中心にかなりあるので、「経済力マップ」では経緯度はずれています。

■2007年版に関して面白かった点
・西欧諸国(フランスやらイギリスやらドイツやら)は、西欧内においては、実際の面積と、GDPに基づいて作り直した面積(以下、「GDP面積」)が相対的にあまり変わりません。つまり各国、大体サイズ通りの経済力になっているということです。原因として考えられるのは・・・
1.植民地化されたことはないため、自然な社会発展を続けてきた
2.経緯度がほぼ同じで、気候や地質も近いため、自然に同じような産業構造の進化、経済成長の歴史をたどった
3.早くから民主主義国家であったため、安定的な成長を続けてこられた
・西欧の中では、スイスとドイツが実際の面積よりもGDP面積が大きい。
・北欧は、面積は大きいが気候が厳しく人口が少ないため、GDP面積は実際の面積よりかなり小さくなっている。
・東欧諸国は、例外なくGDP面積が実際の面積より小さい。冷戦時代にソ連の一部であった国、共産主義で失敗した国が多いため。
・中東は、イランを除けば親米国家しか残っていない。サウジアラビアとクウェートは中東を代表する新米産油国。イスラエルは様々な産業が発達している。アラブ首長国連邦は石油は出ないがドバイに代表されるように、中東の金融およびサービスの中心地になっている。
・アフリカは、4カ国(アルジェリア、ナイジェリア、エジプト、南アフリカ共和国)しか残っていない。エジプトは、スエズ運河を有し、ヨーロッパや中東との中継地点になっていることが大きい。南アフリカ共和国は、裕福な白人も多く、民主化も早かったことから、経済発展を享受している。アルジェリアは産油国であり、天然ガスも豊富。ナイジェリアも、産油国。つまり、ナイジェリアも、「ナイ」といいつつ、「アル」。石油に関してはナイジェリアもアルジェリアもどっちもアルジェリア。
・南アジアは、インドとパキスタンのみ。2050年の地図を見ると分かるが、インドはとんでもない速さで経済成長を続けている。
・東南アジアは、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアおよびシンガポールが残っている。驚異的なのはシンガポール。正直、元の地図にはシンガポールは小さ過ぎて載ってさえいなかった(失礼な地図や・・笑)。よって、シンガポールは楕円で表現したけど、実際の面積よりも遥かに大きい。マレーシアと同じぐらい。さすが一人当たりGDPアジア1位(この前、日本が抜かれた)。
・オセアニアは、オーストラリアが意外と小さい。「コアラとカンガルーの数を、面積で表してみた」の地図なら、世界唯一の超大国になれるけど。
・東アジアは、日本の大きさが目立つ。さすが日本。とてつもない日本。美しい日本。台湾も、実際の大きさよりもGDP面積がずっと大きい。中国は急成長の結果、今は世界3位で、これからも伸び続ける(1位:アメリカ、2位:日本)。
・南米は、ブラジルが地域の覇者。そしてこの傾向は今後、更に顕著になる。ベネズエラは反米産油国。
・アメリカはさすがの大きさ。メキシコは中米の覇者。カナダは寒過ぎて小さい。
■2007年版に関するまとめ
・気候との関係
北の方の国(北欧、カナダ、ロシア)は、やはり寒くて人が住まなかったんだな・・・というのがよく分かる。よって、面積は大きい国が多いが、GDP面積は実際の面積より小さい。
・石油との関係
当然ではあるが、油が出る国は強い。本当に強い。
・植民地支配および人口の関係(カッコの中のランキングは、人口)
すごく雑な分類をすると、フランス・オランダ・ベルギー・スペイン・ポルトガルなどの植民地支配は搾取型、日本の植民地支配は集中的に投資して日本本土と同じ水準に引き上げる型、イギリス・アメリカの植民地支配はその中間ぐらいと言える。
特に南方の国を中心に、スペイン・ポルトガル・オランダ・フランスに植民地化され、今も旧宗主国(植民地支配していた側)のために嗜好品(カカオやらタバコやら)を生産している国が多く、これらの国はこの地図から消されている(GDPが10兆円より小さいから)。
その証拠にフランスの旧植民地は、産油国であるアルジェリアを除いて、一つもこの地図に残っていない。
スペインやポルトガルの植民地であった南米は、スペインやポルトガルの衰退期が他国よりも早かったため独立も早く(1800年代)、比較的マシ。ブラジルは人口(1.8億人:5位)も国土も大きいため、強い。
アジアでは、帝国主義時代も独立国であった中国・タイが残っている。
中国(14億人:1位)は植民地支配を受けたことはないが(租界など、部分的な植民地支配はあった)、大躍進・文化大革命など政治的混沌のせいで、これまで成長が抑制されてきた。しかし14億人もの人口を抱える国のGDPが小さくとどまっているのはそもそも異常であり、今はそのポテンシャルが大いに解放されている。
タイは、人口は中程度(0.6億人:19位)だが、植民地支配を受けたことがないため、「独立して自然に成長した場合のアジア」を示す例であると言える。
シムシティ的な独裁国家であるシンガポール(0.04億人:118位)はマレーシアから分離した新しい国なので、例外。そして例外的に強い。
アメリカの植民地だったフィリピン(0.9億人:12位)は、独立時は旧植民地の中でも経済力が抜きん出ていたが、独立後の成長が鈍い。
イギリスの植民地だったマレーシア(0.27億人:44位)およびインド(11億人:2位)は、状態は悪くない。インドはそもそもとんでもない人口を擁する南アジアの巨象なので、ポテンシャル通りの状態に戻る過程にあるとも言える。
オランダの植民地だったインドネシア(2.5億人:4位)も、搾取はされたが、人口の効果が大きい。
日本の植民地であった台湾(0.23億人:47位)および韓国(0.48億人:24位)は、日本統治時代に近代化の礎ができ、独立後に大きく開花した。また、韓国は北朝鮮、台湾は中国という「自国とアメリカにとっての共通の敵」がいたことも、アメリカとの関係の深化につながり、経済発展に寄与した。
このように、雑に言えば、今の世界各国の経済力は、
「旧宗主国が誰であったか、人口はどれぐらいか、そして油は出るのか」で決まっているというのが、僕の持論です。

■2050年版に関するまとめ
・多極化の時代
「アメリカ一極支配時代の終焉」や「多極化の時代」というフレーズは、特にリーマンショック以来聞き飽きるほどに聞いたけど、この地図を見るとそれがよく分かります。
北米は引き続きアメリカ、中米はメキシコ、南米はブラジル、南アジアはインド、東南アジアはインドネシアが地域覇権国家になるのは間違いないでしょう。「地図に残るか残らないか」だけでもこの点は自明です。
問題は、これらの地域と比べて、覇権国家がどこになるのかがはっきりしない地域です。
ヨーロッパは、相変わらずそれぞれが良いバランスになっています。この地図を見ると、なぜ強いEUを作ろうとしているのか、そして拡大しようとしているのかがよく分かります。統合して一つの極としてまとまらなければ、ヨーロッパは中程度の国が集まっただけの地域になってしまいます。統合することによって、国家を超えた「覇権超国家」になれるのです。
ロシアは、昔から「自分たちはヨーロッパだ」と言いつつも、あの広大な国土は極東にまで及んでいます。明治以降の日本はずっと、南下してくるロシアが最大の仮想敵でした。乱暴な言い方をすれば、日露戦争は然り、日清戦争も、日韓併合も、或いは第二次世界大戦までもが、日ロ関係に端を発していると言えます。極東ロシアの都市ウラジオストクは、「東を征服する」という意味らしいです。東ってどこ?そう、日本です。
そのロシアは今後、ロシアだけで一つの極として立つことになるのだと予想されますし、グルジア侵攻はそれを示す狼煙のようなものでしょう。
オセアニアは、オーストラリアがカンガルーやコアラと仲良く暮らしていくことが予想されます。基本的に平和な地域です。いざという時は豪州への亡命が賢明でしょう。安全保障上は日本やアメリカと、経済上は中国との接近が進んでいます。
そして、一番の問題は東アジアでしょう。
経済規模で中国が一番大きいのは間違いないです。アメリカよりも大きいです。しかし、日本も適度に大きい。そして、日中韓は、仲が良くない。更に、台湾もなかなか大きいです。中国と台湾はご存知の通り・・・。更に更に、インドも実は近く、中国との関係は良くないです。更に更に更に、ロシアも近く、ややこしいです。
中国およびインドが地域覇権国家になるポテンシャルを多分に秘めていることは間違いないのですが、どこの地域の覇権国家になるのか。北東・南・東南・西・中央のアジアを全て含むブロックになるのか。それとも、南アジアはインド、東南アジアはインドネシア、中央アジアは中国・・・というアジア内の多極化が起こるのか。日本は一つの極として立つのか。韓国はどこにつくのか。
「ASEAN+3」、「東アジア共同体」、「上海協力機構」・・・東アジアの勢力図を占うための様々な試みや憶測が錯綜しているのは、他の地域と違って、アジアは複数の国家がそれぞれ強い引力と斥力を発しており、どのように落ち着くのかが見えないからです。
欧州の場合は引力が強く働きEUが誕生しましたが、アジアは至るところで大きな斥力が働いています。
・過去への回帰、本当の実力への回帰
もう1点だけ付け加えるなら、北方の国(ロシア、カナダ)を除けば、多くの国が「面積+人口」で構成される「実力」に近付いているように思います。
中国・インド・インドネシア・ブラジルはまさにその典型例です。
また、歴史上の大国(インド・中国)が、もとの地位に戻っている・・・とも言えます。
つまり、第二次世界大戦前から続いている帝国主義時代、植民地支配時代からやっと世界が解き放たれた・・・と言えます。アフリカを除いて。アフリカは奴隷貿易の時代から7世紀もの間、ずっと呪縛から逃れられていません。アフリカが本当に解放される日が来るのか、なかなか見えてきません。
東欧・中央アジアは、ソ連による支配と、共産主義の失敗が比較的最近であるため、その呪縛からは解放されていないと言えます。
中東は、油が未来を占うでしょう。
・未来の不確実性
もう1点だけ付け加えます。
2050年の予測は、あくまでも予測です。
30年前には、誰もソ連が崩壊するなんて思っていませんでした。
20年前まで、中国が世界一になるなんて、珍説の最たるものでした。日本が世界一になると思っている人が内外にたくさんいました。
10年前まで、2008年にアメリカの金融支配が終わると誰も思っていませんでした。
かつては、「南米の時代が来る」という人がたくさんいたそうですが、アルゼンチンの経済破綻を以てその説も消えました。
10年後のことも正確には分かりません。
しかも、BRICsがすごいとか、煽り立てたのは、投資銀行です。煽り立てれば、みんながそこに投資します。すると、本当にそこで経済成長が起こります。あるいは、起こったように見えます。
この2050年の未来がどこまで本当なのか。
それは誰にも分かりません。
ただ一つ分かっていることは、何らかの形で、今の世界の勢力図は大きく変わるということです。
そして、大きく世界のバランスが変わる時に、大きな戦争が起こり、新しい時代が訪れます。
この点を、色んな意味で、注視していく必要があるでしょう。 |